名古屋高裁の歴史的判決を受けて、すべての自衛隊海外派兵の中止を求める声明
名古屋高裁の歴史的判決を受けて、
すべての自衛隊海外派兵の中止を求める声明
4月17日、名古屋高等裁判所において、自衛隊イラク派遣差止などを求めた訴訟の控訴審判決が出されました。派遣差止請求を却下し、慰謝料請求も棄却したことは遺憾と言わざるをえません。しかし、バグダッド周辺はイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、航空自衛隊がイラクでおこなっている武装した多国籍軍兵士の輸送は、他国による武力行使と一体化した行動であるとして、イラク特措法に違反し、さらに憲法第9条にも違反するとしたのです。自衛隊に関する憲法判断は1973年の長沼ナイキ訴訟一審判決以来です。また、自衛隊の海外活動については、初の憲法判断となります。
司法が自衛隊の存在やその活動に対してのチェックを放棄して以降、自衛隊はますます肥大化し強化され、テロ特措法やイラク特措法の制定で海外にまで活動の範囲を拡大し、さらに米軍指揮下に入り、一体化が進められています。解釈改憲どころか憲法の存在を無視するかのような米軍追随の軍事戦略が展開されています。こうした中で今回の判決は、政府がひた隠しにしてきた自衛隊の海外活動の実態を暴き、その活動内容を違憲としました。司法本来の責務を果たし、9条の力を国民の前に示し、政府がなし崩しに進めてきた海外派兵を厳しく断罪したのです。政府は直ちにイラクから航空自衛隊を撤退させるべきです。
新テロ特措法にもとづくインド洋上での海上自衛隊の給油活動についても、アフガニスタンへ空爆をおこなっている艦船への補給も含まれ、今回の判決にそって考えれば、まさに武力行使と一体化した行動です。司法の判断を待つまでもなく、海上自衛隊も直ちに撤退すべきです。
この間の有事法制の拡大強化、そして自衛隊法の「改正」による海外活動の本来任務への格上げを受けて、いま、政府与党は、野党の一部も巻き込んで憲法第九条を空洞化させる派兵恒久法の制定を画策しています。特別法にもとづく活動実態が暴かれ、違憲判決が下されたのに、派兵の一般法を制定し、自衛隊を海外へ次々と送り出すことは、絶対に容認できません。国際貢献やテロ対策などの名の下、なし崩しに派兵の道を拡大しようとする潮流に対しても、今回の判決は警鐘を鳴らし、歯止めをかけたと言えます。
さらに判決では、「戦争の遂行への加担・協力を強制されるような場合には・・・裁判所に違憲行為の差し止めや損害賠償請求により救済を求めることができ」るとし、憲法前文の平和的生存権の具体的権利性を認めました。有事法制、特に国民保護法により、平時における訓練参加など国民の戦争協力が定められ、「戦争のできる国づくり」が仕上げられようしている中、今後の反戦・平和運動に大きな力を与えるものです。
以上から、今回の判決は、歴史的・画期的意義をもつ判決と高く評価できます。この判決をもたらしたのは、原告となりイラク派兵違憲を訴え続けた3,000人を超える市民の力です。その周りには、イラク侵略戦争に反対し、不正とウソを暴き、占領軍の撤退を求め続けてきた世界中の市民がいたことも見逃せません。そして、この市民の力と日本国憲法とりわけ9条の力が相まって、この歴史的判決は生みだされました。あらためて私たちは、粘り強く声を上げ続ける大切さを確認することができました。
九条の会・石川ネットは、この間、九条を守り、生かし、その理念を実現するという立場からイラク派兵に反対し、撤退を求める声を上げ続けてきました。県内では小松基地から81人の隊員が派遣されており、現在も3名が現地で活動しています。戦闘地域での違法・違憲かつ危険な行動から直ちに撤退させるべきであり、今後の派兵も当然中止すべきです。私たちは今回の違憲判決を力に、自衛隊の海外派兵反対はもちろんのこと、九条を守り、平和を実現する取り組みをさらに広げていくことをここに表明します。
2008年4月23日
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